スイカ・メロンのワンポイントアドバイス

 スイカ・メロンのワンポイントアドバイス

 

ーーーー  もくじ  ーーーー

 

 

 

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遊んではいない『あそびづる』(1) スイカの急性萎ちようを救う

 

スイカは本来、つるを自由に伸ばし、つぎつぎに着果して行く性質を持っている。ところが人間が狭い場所でたくさんの収量をあげようとすると、つるや果実の着果を放任するわけにはいかなくなる。 立作りや、這作りでハウス内に密植する場合などでは、果実の肥大に必要な葉の枚数を確保した後は、 余分な「つる」を全部除去し、いわゆる「生長点無 し」の丸坊主の姿にしていたものである。

●急性萎ちようの発生
スイカのハウスに限らず、日本のハウスは連作が 続いていても、ハウスを新しい場所へ移動することは、めったに行わない。それだけ土地も労力も不足気味であり、その結果として連作障害の発生は免れない。スイカの急性萎ちようもその一例とみられる。台木のユウガオつる割れ病も一因であったが、耐病性 ユウガオ台を用い、種子消毒をすることによってこの原因が除かれても、なお発生するこの障害には、 頭を抱えた産地も多い。しらずしらずの間に連作による土の老化や不定性土壌病害(病気ではないが悪 条件のときに生育を悪くする微生物群)の増加が起 きていたのである。

●キュウリの整枝法に学ぶ
連作のハウスで寒い時期に植え、無加温で四~五 月ごろ収穫しようとする半促成栽培(スイカはこの 作型が多い)で、大きなスイカが収穫できる10日 から二週間前ぐらいに突然葉がしおれ枯れ上がってくる…、これが「急性萎ちよう」である。当然収穫

 

 

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直前の果実は目前で捨てざるを得ない。まことに腹立たしい障害である。 土壌の悪化が原因なので、土作りや土壌消毒が根本的対策であることは言うまでもないが、これは一 朝一夕にできるものではない。そのとき参考になったのがなんとキュウリの摘心栽培である。白イボ キュウリの摘心栽培は、主枝を摘心して発生する子 枝や孫枝に着果させるのであるが、枝先が伸び放題 だと過繁茂状態になるので、長い枝先はまた摘心す る。この場合、全ての枝先を摘心してしまうと突然 根が弱り、株全体が長持ちしなくなる。したがって 常に数本の元気に伸びつつある生長点を残しておくのがコツということを以前にワンポイント・アドバ イス、「摘み過ぎはマイナスーキュウリの整枝」で述 べた。

●スイカの整枝法
一本の苗で通常果実は一個しか着果させないが、 一本のつるで葉面積を確保しようとするとかなりの長さを必要とする。したがって果実を着けない主枝 を二~三本根元から出して葉面積を稼ぐのであるが、 これらの主枝も先端は摘心する。 土が良好で根の張りがよい元気なハウスの場合は 収穫まで株は十分元気であるが、近ごろは急性萎 ちようの危険をはらむハウスが多い。そこで主枝の 先端に近いところの腋芽を合計10本くらいキュウ リに習って伸ばすのである。伸ばす方向を通路の反対側や、ハウスの外側にしておけばじゃまになるこ とも少ない。 この方法で問題の急性萎ちようはかなり改善され た。むずかしい言葉でいえば、「生長点を残すことに より、体内のサイトカイニン活性を高め、根の発生を多くするため養水分の吸水が衰えることなく、急性萎ちようを防ぐことができる。」と言うことになる。 葉面積を増やすための着果させない主枝や、生長点確保のために伸ばす腋芽のことを「あそびづる」 という。このくらい働らきのある「あそびにん」も めずらしいのではなかろうか。

 

 

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遊んではいない『あそびづる』(1) メロンの障害を防ぐ

 

キュウリやスイカの「あそびづる」は全国の生産者の理解を得て、おどろくほどの普及をみた。それ による弊害といえば、一部のスイカで元気が良過ぎ て、収穫間際の果実がまた肥大を始め(いわゆる二段肥大)、その結果、心部に空洞が生じることくらい であろう。その対策はいずれ述べるとして、この稿 ではメロンについて述べてみよう。


●メロンは最多のハウス果菜

統計を調べてみたら、いつのまにやらメロンは我が国で一番延べ作付面積の多いハウス野菜になって いた。日本の消費者のレベルの高さがうかがわれる。 ちなみに2位はイチゴであり、昔の本命、キュウリ、 トマトがこれに続いている。 このメロンも栽培時期、栽培法はさまざまで問題点の少ない品種や作型も勿論存在する。

●立作りでの障害
高品質の品種では立作りがほとんどであるが、スイカと同様に、土が良好で無理のない栽培では障害 は少なかった。その限りでは栽培の易しい果菜類 だったのである。 メロンがトマトやキュウリより栽培が易しかったのは、長期に生長と収穫を続ける必要がないからである。定植・生長期・着花期・肥大期・成熟収種期 とそれぞれの時期に定められた管理を行えばそれで 良かった。収穫間際には糖度を上げるために水切り をするが、そのため樹が弱り、根が痛んでしまうことがある。それでも、収穫後の樹は枯れてもいい訳 だから、樹勢を維持しつつ収穫を長期に続けるキュ

 

 

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ウリやトマトより易しいのは自明の理である。ちょうど水稲の栽培が易しくなったのに似ている。 それ故、整枝に対する注意もなおざりとなり、肥大のための葉数を確保したら主枝を摘心し、側枝も 全部摘んでしまう整枝が行われている。 歴史の古いアールスの温室栽培メロンも同様であるが、温室アールスは高価なので土壌消毒は完全に行われているし、土の老化は入れ替えで対応してい るので余り問題は起きていない。 ところが通常のハウスの地床・立作りでは、土の 完全消毒も不可能だし、土の入れ替えもできるはず がない。スイカと同様連作障害による生育の不調が 生じても不思議はない。事実、急性萎ちよう、日中 のしおれ、葉の黄化などの多くの生産阻害要因が報告されている。それらの中にはつる割れ病のような 明らかな土壌病害のケースもあり、また北海道にお けるバーチシリュウムのような新病害のケースもあ るだろう。しかしながら、いくら調べても原因の判 らないケースも多いのである。大部分の場合、根の張りが悪いほかはどこと言って問題点は見出せない のである。

●「あそびづる」は百薬の長?
スイカであれメロンであれ、つるの生長点を全部 摘んでしまうと根の生長が不良となることはキュウ リと同様に明らかであるが、短期間で収穫してしま うので、土が健全な場合は問題とならない。しかし 連作により土が老化している場合は、根を後まで 元気に伸び続けさせる努力をしなければならない。 そうしないと果実の肥大に多量な養水分をうばわれる時期に、萎ちようや葉の黄化をまねく。 そこで今まで誰もやらなかった立作りメロンに 「あそびづる」を出す栽培をやってみると、案外と いいのである。土作りとともにメロン栽培を安定さ せる特効薬になるかも知れない。着果三~四週間後 から、中位の一、二本の腋芽を計画的に伸ばす簡単 な方法である。

 

 

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なにがなんでも温度確保(スイカ)開花・受精・着果には温度が要る

 

一作の収益では、スイカはそれほど儲かるもので はない。フィルムを四重にして保温する半促成栽培 でも粗収益は10坪当たり100万円ほどである。 したがって温風暖房機による十分な加温など思いもよらない。一冬に100万円の石油代を使うピーマ ンの促成栽培とは比べものにならない。そんなスイカでも、どうしても適温を確保しなければならない 時期がある。それが開花・受精を中心とする一時期 である。

●スイカはそれを我慢できない
無理は禁物とは言っても無理をさせなければなら ない。無加温半促成スイカの定植初期である。経済上 加温はできないのだから、光が少なかろうが温度 が高かろうが二重にも三重にもトンネル、カーテン をかけ、ハウスを閉めきって寒い時期に定植する。 少しでも早出しをすることが収益増につながるから 温度優先の管理にならざるを得ない。それでも寒い ものは寒い。 かろうじてつるが伸び雌花が着いたとしても、寒くては開花結実はむずかしい。不思議なことに寒くても雌花はよく着くのだが、雄花が不足して必要な 花粉が手に入らない。花粉の入手法は別の頃で述べ たから省略するとして、こんどは交配しても受精や 着果が不良となる。やはり温度を上げざるを得ない。 我慢強いスイカもこのときばかりは寒さの我慢がで きないのである。年によっては早期の着果をあきら めざるを得ないことも生じる。それが嫌なら保温に 金をかけるか加温するか、方法は二つに一つである。 大面積のハウス内トンネルにコモ状のものをかけ、

 

 

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朝夕開け閉めすることは日本の労力事情では無理である。だから、透明で保温性の高い資材の多重被覆 か、温風暖房をその時期だけ使用する。開花期だけ なので石油代は問題ではないが暖房機は必要である。 秋冬作兼用にハウスに設置しておくか、スイカ専用 なら各ハウスの作期を多少ずらしておいて、暖房機を移動してもよい。 着果が確実になったら暖房を止め、無理な多重被 覆も徐々に少なくしていくが、その頃から暖かくな るのであまり低温で困ることも少なくなる。 以上のことは、スイカ農家は知っているはずであ るが、未だに、春先の寒い年は低温による着果不良 が問題となっている。 広い日本、情報が行き渡らないのか、それとも承 知の上で、不完全な施設で無理な早植えを余儀なく されているのであろうか。

 

 

 

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15度とはなにか?(メロン) 定植に必要な最低地温

 

筆者の若い頃、と言ってもまだ十二才で旧制農業学校の一年生のとき、野菜の学期末試験があった。 後の香川大学教授倉田久男さんが先生で、問題の一 つに「15度とはなにか」とあった。そんな問題を 出されてもなんのことやら判るわけはない。しかし 授業をまじめに聞いていればできた問題であったと あとで判った。いろいろな露地野菜の講義の中で、 十字花科野菜の花芽分化は秋口に気温が下がり、平均気温が15℃になった頃に大概起きると言うこと を話されていたからである。六十才を過ぎた今まで できなかったくやしさと「15℃」と言う温度は忘 れたことはない。 別の野菜にも「15℃」と言う忘れてはならない 温度があった。メロンの定植時の最低地温がその一 例である。

●メロンは接木してもメロン(のことが多い)
メロンは高温性の果菜であるが、生育適温になるまで待っていては早出しはできないし、北海道など では、最需要期の月遅れの盆を逃してしまうかも知 れない。したがって、多少の無理は承知で早植えす るのであるが、それにも限度がある。寒い時に植えても、その後の生育に悪影響を生じるか寒害に逢っ てしまうからである。 何を目安に定植期を決めたらよいかが問題である が、それが最低地温であるといえよう。トンネル、 ハウス、暖房の有無、フィルムの種類、マルチのあるなし、水封マルチの有無、その年の気候など温度 を左右する条件はいろいろあって、それぞれ定植可 能な早さは異なるのであるが、地温を目安にするの

 

 

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が一番いいと思う。15℃がそれである。 近ごろのメロンの品種は、つる割れ病抵抗性のも のが多いから接木することは少ないが、それでも皆無ではない。台木がメロンでなければ地温が多少低 くてもよいような気がするが、プリンスメロン以外はまずだめである。それは台木がこれまたメロンだ からである。 品質を重視する現在のメロン栽培では、低地温に 強かろうと土壌病害に強かろうとカボチャに接木す ることはまず無いと言ってよい。果実の品質が低下 するからである。キュウリはカボチャに接木するこ とで最低地温がかなり下げられ、低温時の栽培が可 能になっているが、メロンではあきらめて一五℃を 守ってもらう必要がある。

●15℃への挑戦
普通にトンネルやハウスで地温が一五℃になるの を待っていたら、この競争の世の中、他産地に負け てしまうから、あらゆる手段で地温の上昇に努めな ければならない。生産費の関係で無加温ハウスとか トンネル栽培と決めたのならその範囲内で最大の努 力をする。 フィルムはハウスならハウスホット、トンネルな らサンホットのような保温性のよいものを使う。透 明マルチを早目に施し、土に蓄熱する。天気のよい 地方なら「水まくら」も有効であろう。トンネルは 密封し冷たい水はかけない。考えれば多少でも地温 を上げる方法はいくらもある。 苗の方もなおざりにしてはいけない。定植が近づ いたら水を控え、夜温を低目にして風や光にさらし 苗を丈夫にして置く。(ハードニングー硬化と言う) 地温が上昇したかどうか温度計で計る必要もある。 代表的な地点の地下10センチのところへ棒状温度計を さしておき、朝方の温度が15℃になったらメロン の定植はオーケーである。

 

 

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心止まり苗を少なくするには 石灰・ホウ素の欠乏か?(スイカ・メロン)

 

メロンやスイカも一年中八百屋の店頭でみられるようになってきた。ということは一年中さまざまな 気象条件のときでも栽培されているということである。日本のどこかで… このように栽培が多様化すると、育苗の条件もさ まざまであるらしく、いろいろな生育障害の相談を 受ける。なかで多いのがこの「心止まり」である。 文字どおり生長点の心が止まってしまった苗でその 後の主枝の生長は望めない。下葉の根元から腋芽の発生を見ることもあるが、そのまま座止してしまう こともある。いずれにしろ困った生理障害である。

●トマトやキュウリでもよくある障害
心止まり苗はトマトやキュウリでもよくみられる。 多くは温度の不適切な管理によるのであるが、不思議なことに低温が原因と思われる場合と高温の場合 とが半々である。同じ障害なのに変な話だなと首を ひねっていたが、ふと気がついたのはカルシウムの 欠乏症であった。

●高温でも低温でも生じるCa欠
以前高温によるCa欠の研究をやっていた。地温と 気温を別々に調節する装置で、地温が高いだけでも 気温が高いだけでもトマトのCa欠(尻腐れ症)は発 生した。地温が高いのは“の吸収が悪くなるからで あり、気温が高い場合は体内でCaが効かなくなって しまうからと判った。ところが、低すぎる温度もま たCa欠を生じることが別の研究者の報告で明らかに なった。この場合は根によるCaの吸収が不良になるためのようであった。

 

 

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●Caの欠乏は生長点で起きる

Caの欠乏による障害は生長の盛んな場所で生じる。 不足気味のCaが生長点まで移動してこないからであ る。目に見えない生長点部分でCa不足が起きると細 胞が死んで、心が止まってしまう。人間の目に見え るころには傷はきれいに直ってつるりとしており、 最初から無かったように見えるのが特徴である。 スイカやメロンの心止まりもおそらく同じ原因で はないかと思われる。症状も発生環境も全く同じだ からである。

 

●育苗の環境

寒い時期の育苗はポット苗を温室内トンネルで 行っている。加温や保温が不十分であれば低温にな るし、晴れた日にトンネルやハウスを開け忘れるか、 開けるのが遅れれば過高温になる。いずれにしろCa 欠の要因となる。暑い時期の育苗ではむろん高温害としてのCa欠は出やすい条件である。 Ca欠は葉面散布によっても軽減されるはずである が、研究によれば塩化カルシウムを一日おきに散布 してもまだ足りないと言われるほどなので、温度を 適当に保って回避したほうが完全な解決法といえる。

 

●その他の注意点

Ca欠が原因だとすれば他にも気をつけたい点があ る。まずポット育苗による水分の変動である。小さ いポットは水にムラができて乾き易い。土の乾燥・ 高低温・肥料の高濃度が、Ca吸収を悪くする三大要 因なので、それらに注意を払っておいても損はない。 余談だが、ホウ素欠乏の可能性がない訳でもない。 ただ、これは都合のよいことにCa欠の回避策と同じ ような方法で解決できるので、今はどちらなのかと 言う詮索はしないでおこう。

 

 

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水まくらで暖める! 水封マルチの効用と注意点(スイカ・メロン)

 

冬から春にかけてのトンネルや無加温ハウスでスイカやメロンを栽培する場合は、一日でも早く植え たいものである。ところが無加温であるからそれに は限界があり、保温資材の被覆や水封マルチが利用 される。水封マルチは別名「水まくら」と呼ばれる。 これは、一見、冷たそうな水に日中の太陽の熱を蓄 熱して、夜間にトンネル内を暖めようと言う日本人 の知恵である。

 

●太陽光が水を暖める

エネルギーを消費しないで夜温を高めるので経済 的ではあるが、なにしろその蓄熱量は少ないし、日 照が少ないときは蓄熱も少ないから、その効用と限 界を良く知って上手に利用しなければならない。ま ずあまりに過信して早植えしないことである。トン ネルだけの場合は、外温の影響を受け易いから、あ てにして早植えしすぎると寒波のために枯らしてし まうこともある。通常の定植期より一週間か十日早 植えできれば上々である。サンホットなど保温性の 高いフィルムと併用することも必要であろう。ハウ ス内トンネルの場合は寒害を防ぐためと多少の生育 の促進をもくろむ程度と考えたほうがいい。暖房機 で適温に管理できる場合とは訳が違うからである。 多少の生育の進みでも、その後の外温の上昇で生育 や収穫はかなり進むものだから無視できない効果と いえる。

 

●「水まくら」で冷えることもある。

人間の発熱のときの「水まくら」は勿論冷やすた めに使用する。トンネル内の「水まくら」も暖める

 

 

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つもりが逆に冷やしてしまうこともあるので要注意である。先に述べたように太陽光で水を暖めるのだから、寒くて日照の少ない北陸・山陰・九州の西側 のような地帯では、十二月から二月ごろまでの日照 の少ないときは効果が無いばかりか気温や地温を下げてしまう。この時期なら、寒くても昼は日照が多 い表日本の各地で利用すべきである。裏日本でも三月ともなると日照が多くなる。その時期からの利用 は効果があることはいうまでもない。 だいたいメロンやスイカの生育は温度だけで進む わけではない。光も当然必要だから、寒くて日照が 少ない北陸・山陰の栽培は冬期は育苗だけにしておいて、日照が増すと同時に植え出すのが理にかなっている。早目に定植しても、一向に大きくならずに、 その後の日照の回復時に植えだしたものと同じに なってしまったと言う試験結果もある。

 

 

 

 

 

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上手なスイカの着果法 人工交配でより確実

 

自家用で畑の隅に二、三本植えたスイカでも、何十アールも専門に栽培する場合でも、スイカは果実が成らないことにはどうしようもない。スイカの果実を 確実につけるにはどうしたらよいのだろうか。

 

●雌花のつけ方

まず雌花が着かなければ果実は成らない。初期生育をあまり急がせないようにやや押さえ気味にすれば雌花は着きやすくなる。初期生育を迎えることは 雌花を着けるだけでなく、授粉->着果->肥大開始ま で続ける必要がある。

 

●雄花のつけ方

交配をするために、雄花も必要である。春早い時 期のトンネルや冬のハウス栽培では、雌花はたくさ ん着くのに雄花が少なく、交配ができないことがあ る。このようなときには別に暖かいハウスなどに鉢植えのスイカを栽培しておけば雄花を得ることがで きる。この場合のスイカの品種は同じものでなくて もよく、低温に強く、雄花の着きやすい品種ならな んでもよいのである。

 

●人エ交配

ハウスの中にミツバチを入れたり、暖かい時期は 自然のままで虫に交配させてもよいのだが、より確実に着果させるには人工交配を行う。なるべく午前中の早い時間に、開いた雄花を用いて、当日開花した雌花の柱頭に花粉をつけてやる。午後の遅い時間 になると着果しにくくなるので注意が必要である。

 

 

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●花決めと玉決め

交配するときに、あまり小さくて花びらの下の子房が小さく丸い雌花は、着果しにくいし、着果して も大きい果実にならないので摘んで捨て、次の花を待つ。雌花は大きくて、子房がやや長細いものがよ い。また玉決めは多目に着果させておき、卵大のと きに偏型でなくやや長細い、素直に肥大しているも のを残し、他は摘除することで行う。

 

●着果後の管理

着果後は潅水や追肥を行って、果実の肥大を図る ようにする。

 

 

 

 

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上手なメロンの着果法 土壌水分調節が決め

 

メロンの確実な着果法は、スイカの着果法によく似ている。 メロンもスイカと同様にただ着果すればよいわけではなく、適度な大きさに肥大し品質の良いものに しなければならないからである。

大きなメロンを成らせるには、それなりのしっかりした樹を作らなければならない。肥切れしていな い、素直な若苗を植えることから樹作りが始まる。 地温15℃以上になったら定植し、水も肥料も十分効かせて初期生育をスムーズに行わせる。このまま 樹(つる)を伸び放題にすると、立派なつるになる のだが、着果は極めて困難になる。その理由は、つるの勢いが強過ぎるため、茎や葉を生長させるため に多くの同化養分が使われてしまい、充実した雌花 を作るための、あるいは果実を肥大させるための養分が足りなくなるからである。そのために貧弱な雌花となり、交配してやっても落果してしまうはめに なってしまう。

そこで生長点や、若い茎の生長を、一時的に抑え るために土壌を乾かす。また、追肥も着果肥大まで はやらないようにすることが大事である。開花交配 時は天候が良く、温度がある程度高いことが望まし いのであるが、天候が不順なときはホルモンを補助的に使うのもよいであろう。1~2%のBA液を交 配後、果硬部へ少量塗布してやれば効果は抜群であ る。交配は、その日に開いた花に午前中に行うよう にする。 交配時に乾かした土をそのまま乾燥させ続けると、 肥大が悪く、大きな果実にならないので、確実に着 果したことを見とどけてから追肥、潅水を行う。収

 

 

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穫時期が近づいたら、また土を乾燥させて、果実を 適度な大きさに止めるとともに糖度を上げる。 この一連の土壌水分の調節を模式図に示すと図の ようになる。土壌水分のかけ引きが着果をはじめ、 良いメロン作りのポイントであることがお分かりい ただけるであろう。

 

 

 

 

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土壌消毒のあとには完熟堆肥を

 

ビニールハウスの野菜も、連作を重ねると生育が 不良になるのが普通である。いわゆる連作障害である。

連作障害の一番多い原因は土壌病害であるから、 そのまま栽培を続けるためには病害の対策をたてね ばならない。病害対策には

○薬剤による消毒

○太陽熱消毒

○蒸気消毒

○耐病性品種

○接ぎ木栽培

などがあり、クロールピクリン等による土壌消毒が よく行われる。 薬剤による土壌消毒は、十分な薬量と適切な消毒法で十分に効果が出るように実施する必要があるこ とはいうまでもないが、ここに困った問題がある。

消毒は完全にやればやるほど、病原菌も死滅するが その他のもろもろの微生物も死んでしまう。もろもろの菌の中には、肥料を分解してくれる菌もいれば、 根を病気から守ってくれる菌もいる。それらが死ぬ ことにより、アンモニアの集種害(硝酸態窒素に分 解する菌が少ないので)や、土壌病害が逆に多発す るような予期せぬ事態を招くことがある。折角の消毒がアダになるわけである。 こんなことにならないようにするには、消毒、ガス抜きのあとに無病の完熟堆肥を少量(2~300 Kg/10アール)散布混入することである。10日もす れば有用菌は復活して安心して栽培ができるように なる。 消毒後の完熟堆肥の施用は、ハウスの土壌管理の 常識と思ってもらいたい。

 

 

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土壌のPH管理

 

野菜類を栽培する場合、土のphが低過ぎると出来 がよくないことは良く知られている。いわゆる酸性害である。酸性害は野菜の種類によって異なり、ホ ウレンソウ、タマネギなどは特に弱く、ダイコンや イチゴは強いことが知られている。

土は、酸性になりやすい肥料(硫安や硫加、過石 など〉を毎年多施用し、雨が多い時にphが下がりや すいのだが、酸性になりにくい肥料(尿素やヨウリ ン、硝酸カリ)を使い、雨の少ない条件(ハウスや ガラス室)ではphが下がりにくいのである。

酸性になった土は、消石灰、タンカル、苦土石灰 等を与えるとphが上がって酸性が中和されることは ご存知のとおりである。 さて、酸性害は、激しい場合は全く商品になるも のが収穫できないくらいひどいものであるが、適切 な石灰施用で立派な収穫を得ることができる。日本は雨が多く、酸性害が多い国だったのだが、近年は 酸性になりにくい肥料が多くなったこと、石灰を多く施用するようになったことにより中性やアルカリ 性の土も多く見られる。ことに野菜のハウス栽培で は、雨が入らないこともあってphが高い場合も少な くない。

phが高いことは野菜にとってよいことなのであろうか。答えは「ノー」である。酸性と同じようにア ルカリ性も度が過ぎればよくない。特にダイコンや イチゴのように、酸性に強い野菜がアルカリ性の土 に栽培されると生育障害を来たしてしまう。多くは ほう素、亜鉛、マンガン、鉄などの欠乏だが、枯死 する場合もあるので油断できない。

アルカリ性になり過ぎた土は、石灰の施用を控え、 先に述べた硫安や過石を施用することにより回復さ せることができるのである。

 

 

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野菜(収穫物)の大きさの調節

 

野菜は商品として大量に規格化されて生産される ようになったので形、色、味などの品質とともに、 大きさとその揃いも重要な要因となってきた。でき ることなら高く売れる大きさに揃えたいと思うのは 人情だろう。

 

●キュウリは一日二回収穫することも

キュウリ、ナス、ピーマンなど未熟で収穫する果 菜類は収穫時期で大きさが決まる。もちろん、それ なりの品種を上手に栽培した上の話であるが。キュウリなどは熟すまで成らせておくと1キロ以上 にも大きくなるが、100g前後の大きさが値が高 いので10分の一の大きさで採らなければならない。 朝の間は小さ過ぎて採れなかったものが、次の日に は大きくなり過ぎるので、その日の夕方にもう一度 収穫に回らなければならない場合もある。ナスも同 様で、ピーマンは多少大きさに幅があってもよいようである。

葉根菜でも同じように生育の途中で採らなければ ならないものがある。ホウレンソウ、コマッナなどの葉菜類、ニンジン、ダイコン、カブなどの根菜類 がそうである。

 

●メロンは着果節位で

熟してから採る果菜類はどうやって大きさを加減するのであろうか。メロンについて考えてみると、 まず品種である。プリンスメロンのように特別小さ いものもあるが、ネットが出るハウスメロンでも品種により大きくなりやすいもの、小さいものがある。 その次には栽培法である。水や肥料を効かせてのび

 

 

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のび育て過ぎると大きくなり糖度が落ちてまずくなる。それと着果節位が低いと小さく、高いと大きく することができる。品種固有の大きさに調節しよう。 トマトも品種によって大きさがある程度決まるが 小玉が特に問題のようである。出荷できないような 小玉を出さないためには、栽培法に注意するととも に、早い時期での摘果で大きさを確保するようにし よう

 

●ハクサイの小玉品種に注目

結球葉菜のレタスは若苗は大玉、老化苗は小玉に なりやすいと覚えておくとよいであろう。 キャベツも大き過ぎると嫌われる時代となった。 品種選びのほか、密植によりある程度小玉にできるものである。ハクサイは肥料や灌水で調節は可能だ が、あまりいじめると結球しなくなるので注意が必要である。最近小玉の品種が発表され、一部では人 気を得ているようである。

 

 

 

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逃げるが勝ち? 連作障害の回避

 

同じ種類の野菜を同じ畑で作り続けると次第に出来が悪くなり、場合によっては枯れてしまうことは 昔から知られている。ナス科(ナスやトマト)やウ リ科(キュウリ、スイカ、メロン)のものが特に目立ったので同じ場所に植えずに、土地を替えることが早くから行われていた。露地栽培なら簡単に畑を替えられるが、ハウス栽培になると難しい。それで も施設園芸が盛んになってきた昭和三十年代には、 連作障害で良品多収が困難になったハウスを、移動して新しい土地に移す方法が行われ、移動しやすい ハウス構造が検討されたりしていた。しかし近年の ように、ハウスが大きくて立派になり労力不足の世 の中ともなると、ハウスの移動などできるはずもない。ハウスを移さずに連作障害を回避するのが21世紀のトレンドである。

 

●「逃げるが勝ち」は一つの方法

「三十六計逃げるにしかず」と逃げて成功したのは 徳川家康である。筆者も野菜の連作障害回避でまず 考えることは「逃げる」ことだと思う。ハウスを移 動することが一番完全な逃げ方ではあるが、それが できなくても逃げる方法はいくらでもある。それら を列挙すると次のようである。

・耐病虫性の品種を使う。

・接ぎ木をする。

・養液栽培や隔離ベッドを利用する。

 

●連作障害の原因はなにか

「忌地」という言葉がある。文字通り、作ろうとする

 

 

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作物がその土地を嫌うのである。連作障害は広い意味での忌地と考えてよい。作物が嫌って、よくでき ないのであるが、現在では研究が進んで原因がつぎつぎと明らかとなっており、それらの原因を取り除 くことにより、連作を可能にしようとしている。 原因の第一は土壌病虫害である。同じ野菜を作り 続けるとそれに着く病気や線虫が土壌中に残る。長いものは10年も土中に生き続けると言われており、 作物がその土を嫌うのは当然である。

次に野菜は施肥量が多いから土の物理性が悪くなる。必要な肥料成分が偏って多過ぎたり足りなくなったりもする。胆の高低も生じやすい。これらを 総称して「理化学性の悪化」と言う。

三番目は、作物の根からは自分に害を与える毒素 が出ているから、それが土に蓄積して忌地になると いう「説」がある。事実エンドウなどを水耕した水の中には毒素が発見されている。ところが20年も 連作した土でも、土壌消毒で土壌病害を殺してしま うことによって、作物がよくできた、という研究もあるので、実際の土壌ではそれほど心配はいらない。

 

●原因が判れば対策はある

現代は診断の技術が進んでいるから原因不明とい うことはまず無い。原因が判ってしまえば対策は可 能である。もし病虫害と決まったら、それに耐応し た耐性品種を使うか接ぎ木をすればよい。それがだ めなら土壌消毒や養液栽培もある。金と手間はかか るが対策はある。 土の理化学性が問題ならPHを調整し、過多な肥料 を減らし足りないものは補えばよい。土の固さは堆肥の投入や深耕で回復可能である。 問題は、いかに金や労力を少なくしてそれらを行 い、長期に連作を可能にするかである。

 

●総合対策を事前に...

以上の対策は障害が発生してからのものである。

 

 

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もっと必要なことは障害が出ないような普段の管理 である。毎年の堆肥の施用、施肥量の適正化、PHの 調整、微量要素の補い、数年に一回の深耕などを障 害が生じる前からつねに行っておくとともに、障害 発生の早い段階に耐病性品種、土壌消毒を組み合わ せて行くことで連作障害の総合的な対策ができ、長期間同じハウスで連作が可能になるのである。 なお個別の障害については、改めて相談していただければ判る範囲でお答えしたいと思っている。

 

 

 

 

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リン酸過剰の八ウスでもリン酸施肥が必要?

 

「土壌分析の結果リン酸が過剰気味だといわれました。それで次の作のメロンをリン酸肥料無しで定植したのですが生育がよくないような気がします。 リン酸過剰の土壌では、リン酸施肥の必要が無いの でしょうか」 北海道のKさんからこんな質問が寄せられた。同じような疑問をお持ちの農家も多いと思うので、す こし詳しく解説してみよう。

 

●野菜の連作はリン酸の過剰になりやすい

野菜はリン酸肥料がよく効くものが多い。したがって新しいハウスでは、チッ素肥料の何倍もリン酸を施肥することが多くみられる。そのことは別に間違っているわけではなく、もっと多く施肥しても いいのに、と思う場合さえある。問題は何年か経つてからである。野菜のリン酸の吸収量はチッ素の五分の一ぐらいであるから、多く与えられたリン酸の 大部分は吸われないで土の中に残って行く(ちなみ に、リン酸肥料は雨や潅水で流亡することはほとんどない)。土質や施肥量によっても異なるが、数年も すると土壌中にリン酸の集積が進み、チッ素と同量 か、それ以下の施肥量でも十分生育するようになる のであるが、その時期にリン酸の施肥量を減らさな い人が多い。したがって、さらに二、三年経過する とリン酸過剰といわれるようになるのである。

 

●リン酸過剰の症状は

分析の結果リン酸が多いといわれても、外見的に 生育の症状があらわれることはまずない。生育が不良になるだけである。ただし筆者らの研究によると、

 

 

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極端にリン酸が過剰になると下葉が黄色くなり葉に 黄色やかっ色の斑点が出る。リン酸を吸収同化する ために多量の苦土(マグネシウム)が必要なため苦 土欠になるのである。そうなったら手おくれなので それ以前になんらかの方法を講じる必要があるのである。

 

●リン酸は土壌中にどれだけ必要か

土壌中のリン酸の集積度合は有効リン酸(トル オーグ法による)であらわされるのが普通であるが、 20~50ミリグラムあればチッ素と同じぐらいの施肥量 に減らしてもよい。100ミリグラム以上になったら過剰障害の対策が必要となってくる。

 

●リン酸過剰土壌のリン酸施肥

リン酸が過剰なのであるからリン酸肥料をやらな いと考えるのが常識であろう。事実そのように指導されていることも多い。ところが不思議なことに過 剰土壌でもリン酸を施肥すると生育がさらに良くな ることが多い。これはいったいどうしたことなのだ

 

 

 

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ろうか。リン酸が効くからさらにリン酸をやる。す ると土壌はもっとリン酸過剰になる。まことに悪循環である。ハウスのリン酸施肥のやり方は、この際 根本的に考え直す必要がある。

 

●合理的なリン酸施肥

筆者の考えでは、リン酸を十分効かせながら土壌 のリン酸過剰を防ぐには、今の施肥法ではだめだと 思う。それには野菜のリン酸に対する生育反応と土壌中のリン酸の動きを良く知らなければならない。 まず第一にどんな野菜でもリン酸はより若い、早い時期によく効くことを理解する必要がある。言い 替えると若い時期はリン酸が高濃度でなければならない。前に述べたリン酸過剰の土壌でもリン酸施肥 が効果があるのはこのことに他ならない。若い野菜 にとってはかなり高濃度でも過剰ではないのである。 生育がかなり進むとリン酸はそれほど必要でないのに高濃度だから障害となるのである。同じハウス土壌で生育初期は高濃度、後期には低濃度となるよう な管理はできるものであろうか。今の全面全層に施肥するやり方では、仮に元肥重点にやったとしても うまくはいかないであろう。 全くやり方を変えてリン酸だけを植え溝施肥、植え穴施肥にしたらどうだろう。ハウス土壌のごく一 部のみに与えることになるから、リン酸濃度は少量 の施肥でも高濃度にできる。しかも若い間は根の広 がりも狭いから不足することはない。生育が進むと 施肥してない周辺に根が広がり、リン酸の過剰は防 げる。施用したリン酸が少ないから連作が進んでも 過剰集積は防げる。一石三烏の施肥法ではあるまい か。 以上の筆者の考えで、リン酸の施肥法を改善している産地は多い。リン酸肥料の原石は世界的に少な く、いずれは不足する。肥料の節約の意味でも、こ の施肥法は意義あるものとなろう。

 

 

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速成床土のつくり方 鉢上げの日でも大丈

 

野菜づくりは育苗してから植付けることが、非常 に多いことはご承知の通りである。トマトやキュウ リのような果菜類はもちろん、葉菜類でもレタス、 ハクサイ、キャベツ、ネギ類その他が苗を植えている。

これらの中でキャベツ類とネギ類は活着しやすい ので、育苗床から苗を抜き取って、土をあまり根に 着けずに本圃に定植している。しかし、その他のも のは鉢で育苗して、根に鉢土を着けたままで植える ことが多い。

鉢育苗の場合の土を床土(または鉢土)というが、 良い苗をつくる場合に、良い床土がなければならな いことは当然である。いまトマトを10アール栽培する と仮定すると、3000の苗を準備する必要があ り、12センチの鉢で育苗すれば二立方メートル(約二トン)、15センチの鉢なら三立方メートル以上の床土を必要とする(キュ ウリはトマトの約半分)。消毒した土に堆肥や肥料を 混ぜて、長期間堆積して良い床土をつくるに越した ことはないが、量が多いのと、毎年同じに良い床土 をつくることが意外に難しいので、床土づくりはい つまでも農家を悩ませることになる。そこで、だれ にでもでき、しかも毎年同じものができる速成床土 のつくり方をお教えしよう。材料さえ準備して置け ば鉢上げのその日につくって使っても大丈夫である。 まず病害虫の無い土を準備し(やせた山土でもよ い)、完熟堆肥(肥料分の少ない腐葉土、パーク、ワ ラ堆肥など)を三~四割混ぜたものを元土として、 表のような肥料を入れれば出来上がり。スーパーIB を入れる量は、レタス、キュウリ、メロン等比較的小 さい鉢で育苗するものは多目の基準で、トマトを一五

 

 

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センチ鉢で育苗する場合等は少な目とすればよいであろ う。使用する土や堆肥の凪や肥料分もさまざまなの で苦土石灰やスーパーIBの量で加減してほしい。 多くの野菜や花の育苗でもこの処方は使えるので、 まず少量つくって試してから本格的な使用をするこ とをお勧めする。

 

   

 

 

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速堆肥とリン酸のやり方 経済性考え溝施用

 

野菜の栽培もかなり機械化されてきた。特に播種 や定植前の耕起、施肥、畦立て、マルチあたりまで はほとんど機械化され、人力でやる部分は少ないよ うである。このことは重労働がなくなり、省力とな るから大変よいことなのだが、困った問題も生じている。

堆肥や肥料のやり方がそれである。大型トラク ターで耕うん、施肥、畦立てを行う場合、堆肥や肥料は耕うん前に全面に散布するのが普通である。そ の後ロータリーで耕うんするから堆肥と肥料は圃場 の全面全層に混和されることになる。 堆肥は土と混ぜる割合が多いほど生育を良好にするから、全面全層に薄く混ぜてしまうと効果が少な くなる。効果を上げようと思えば多量の堆肥が必要 となる。もう一つ困ったことには、薄く混ぜられた堆肥は早く分解してなくなってしまうことである。 堆肥不足のこのごろ、なんとかしなければならない 問題である。 肥料の中でも、リン酸は同様に薄く混ぜられると 効き方が悪くなり、なおかつ土に吸着して効かなく なる割合も増えてくる。 このような機械化にともなう堆肥とリン酸の不経 済さを解消するには、堆肥とリン酸を溝施用すると よい。そうすれば堆肥もリン酸も節約しながら効果 を出すことができる。 畑やハウスに全面に作付けされるような小型の野 菜は、このような施用法ができないので、比較的浅 い土に堆肥やリン酸を混ぜるようにすれば同様な効 果が期待できる。

 

 

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PHを上げない石灰の施し方

 

施設内の土壌PHが適正でないと、野菜の生育が順調でないことは良く知られている。野菜の種類でも 適性PHは異なり、ホウレンソウやタマネギはややア ルカリ側に、ダイコンやイチゴはやや酸性側に好適PHがある。 PHはアルカリ資材(石灰の場合が多い)の施用量 の多少で上下するが、それ以外の原因については以 外と知られていない。雨や潅水が多いと土壌中のア ルカリ分を流出させるので、PHは下がるし、硫安や 過石のような硫酸根の多いものの施用でもPHは下が る

 

●ハウス土壌のPH

ハウスの土壌は雨の流入が少ないし、硫酸根の肥料の使用が少ない上に石灰は十分施されるのでphが上昇することが多い。PHが上がり過ぎるとマンガン、 亜鉛、ホウ素、鉄などが不溶化して欠乏しやすくな る。葉にクロロシス(黄化や白化すること)が出る のがこれらの欠乏症であるが、クロロシスは出ない までも、生育が不良になって知らぬ間に収量に影響 していることも多い。

 

●phの調節法

phを下げるには石灰の施用量を少なくすればよい はずであるが、野菜の場合は石灰欠乏も出やすいの で石灰を減らしたくはない。そこで「phを上げない 石灰の施し方」が必要になる。 その方法の第一は硫安や過石等のphの下がる肥料 を使うことである。一昔前は土壌を酸性化させるということで嫌われていたこれらの肥料は、アルカリ

 

 

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化しやすいハウス土壌では、その肥効とともにPHの 調節剤としてあらためて見直されてよい。 第二にPHを上げない石灰質肥料の利用である。そんな石灰があるのだろうか、という人がいるかも知 れないが、それがちゃんとあるのである。硫酸カル シウム(石膏)がそれである。10アールに1000キロも与えてもPHは上がることはない。むしろ下がり 気味となる。 PHの上昇は、連作障害の一つといってもよいほど 野菜の生育を悪くすることがある。いずれかの方法 で適正に保ってもらいたい。

 

 

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